[2024.07.22]コンビニ事業における健康保険の扶養要件の落とし穴
昨今の物価上昇に伴い、賃上げの風潮が高まっています。
最低賃金が引き上げられるニュースも目にするようになってきましたが、単純に最低賃金を引き上げる対策だけですと、
健康保険の扶養要件に該当しなくなり、従業員との思わぬトラブルに発展する可能性があります。
今回の記事では、健康保険の被扶養者の収入要件に関する注意点を解説していきます。
1. 健康保険とは
病気やケガによって生じる経済的な負担をお互いに支え合うことを目的とした公的な医療保険制度です。
日本では、すべての国民が何らかの医療保険に加入する「国民皆保険制度」が採用されています。
健康保険の種類は下記3種類に分類されます。
・被用者保険:企業や公務員、教職員が加入する保険(協会けんぽ、組合健保、共済組合など)。
・国民健康保険:自営業者や農業従事者などが加入する保険。
・後期高齢者医療制度:75歳以上の高齢者が対象。
2. 健康保険の被扶養者の要件とは
被扶養者とは、「被用者保険」における制度であり、
国民健康保険は世帯主が家族全員の保険料を負担する為、扶養という概念がありません。
健康保険の被扶養者に必要な要件は主に下記5つになります。
要件が当てはまらない場合は、扶養から外れてしまい、社会保険の加入が必要になります。
■年収要件
被扶養者の年収が130万円未満。
※60歳以上または障害者の場合は180万円未満
■続柄
被保険者の3等身以内の親族。
■国内居住要件
原則、国内に住民票があること。
※海外在住の場合でも、特定の条件(留学、被保険者の海外赴任に同行など)を満たせば例外的に認められる。
■他の健康保険への未加入
就職等により自身で健康保険に加入していないこと。
■年齢制限
75歳未満であること(後期高齢者医療制度の被保険者とならない方)。
3. コンビニ事業におけるリスクを避ける対応方法
従業員との対応で一番重要なことは、従業員に年間収入が130万円を超えても扶養に入り続けることができるという印象を与えないことです。
まずは、配偶者もしくは親御様がお勤めの会社に相談していただくようご案内ください。
2023年10月に国から臨時の対応策が出されましたが、その対応策は、「繫忙期に労働時間を延ばす等で、収入が一時的に上がった」と事業主(コンビニ側)が証明書を発行し、それを基に健康保険組合が最終的な判断をした上で、130万円を超えた場合でも扶養に入り続けられる可能性があるという内容です。
130万円を超えても扶養に入り続けられることが必ずしも保証されているわけではありません。
従業員自身もスマホやSNS等で簡単に調べられるようになりましたが、「130万円を超えても扶養に入れる」という部分だけが独り歩きしてしまっている点に注意が必要です。
仮に従業員にそのような印象を与えてしまった状態で年間収入が130万円を超えた場合、扶養から外れることになり、思わぬトラブルに発展する可能性があります。
また、年間収入130万円未満であっても、事業主(コンビニ側)で社会保険の加入基準を満たせば、社会保険に加入する必要が出てきます。
その為、事業主(コンビニ側)で社会保険の加入基準を満たした場合は、社会保険に加入する必要がある旨を予め従業員に説明すると、不要なトラブルを回避できます。
4. まとめ
・健康保険の被扶養者の収入要件は年間収入130万円未満が原則。
・年間収入130万円を超えても扶養に入り続けられるかは、事業主(コンビニ側)の証明書を基にした各健康保険組合の判断による。
・年間収入130万円未満であっても社会保険に加入しなければならない場合がある。