[2024.08.16]コンビニ事業における助成金申請の落とし穴
コンビニ事業でも助成金の申請についてのお問い合わせが増えています。
助成金は経済的な負担を軽減し、会社の労務管理体制を整備、従業員の雇用の促進や安定を図れる素晴らしい手段ですが、助成金申請にはリスクも伴います。
この記事では、コンビニ事業における助成金申請の注意事項と、それを回避するための注意点について詳しく解説します。
1. 助成金とは
■助成金とは
主に厚生労働省が管轄しているものをさし、要件に該当する限り受給できる上に返済する必要がありません。財源は会社が納める雇用保険料であるため、雇用保険に加入している会社なら要件を満たせばどの会社でも利用できます。
■補助金との違い
助成金と補助金。似ているようですが、まったくの別物です。助成金は「雇用・労働環境を整える」ことに重点が置かれているのに対して、補助金は企業の新規事業や創業促進など、企業が成長する取り組みに対して支援する為に用意されている制度です。
また専門家も異なり、助成金は主に社会保険労務士が、補助金は主に中小企業診断士などが相談相手となります。
■助成金をもらうことのメリット
助成金の最大の目的は「会社の労務管理体制を整備し、従業員の雇用の促進や安定を図る」ことにあります。
つまり助成金のメリットは、
・労働環境が整備されることによる従業員のモチベーション向上
・労務管理上のコンプライアンス強化による企業イメージの向上
だと言えるでしょう。
以前、本HPでもコンビニ事業で活用しやすい助成金についての記事を上げていますので、併せてご確認ください。
参考▶「【コンビニ専門社労士が勧める】コンビニ経営で使いやすい助成金ベスト3」
2. コンビニ事業における助成金申請の注意事項
助成金は経済的な負担を軽減し、雇用や労働環境を整える素晴らしい手段です。
返金不要なので、助成金を申請するだけ得だと思われがちですが、金額面だけで考えると支出の方が多くなる可能性があります。
■労働環境の整備
まずは、会社のルールブックとしての就業規則を整備し、そのルールに則した労務管理を行う必要があります。
具体的には、勤怠管理・賃金の適切な支払い・適正な保険適用・長時間労働の抑制等があげられます。
例えば、雇い入れの際は契約書の作成が必須になり、有期の契約であれば更新手続きも漏れなく行わなければなりません。
助成金を申請することは、労働局の調査に応じることも要件となっている為、調査の中で雇用保険や社会保険の加入漏れが判明した場合、助成金の支給が取り消される可能性もあります。
■正社員転換後の待遇とコスト
キャリアアップ助成金の正社員化コースを例にすると、給与水準を3%以上アップし、かつ賞与または退職金制度の対象にしなくてはいけません。
また、正社員に対しての定時昇給の制度も導入しなくてはなりません。最近では、実績も判断基準として見られるようになっています。
経営不振等により賞与の支払いができない、あるいは定時昇給が行えない場合には、財務資料等の提示を求められる可能性があります。
【時給1,000円の人を正社員にした場合】
1,000円×1.03×174時間(一般的な正社員の勤務時間)=179,220円 が基本給の最低ラインとなります。残業代や深夜勤務手当はそれに上乗せして支払う必要があります。
加えて、賞与の金額は、指標として半期5万円、年間10万円という目安が示されています。
退職金の積み立て金額は月額5,000円、年間6万円が目安となります。
また、制度として導入する以上、助成金の対象とならない既存の正社員に対しても同等の待遇が求められます。待遇の差があると、信頼関係の破綻に繋がり、従業員とのトラブルに発展する恐れがあります。
このように、助成金の受給金額だけを目的とすると、最終的にはコストの方が上回る可能性がある為、助成金の申請は慎重に検討する必要があります。
3. 助成金申請に関する課題を避ける対応方法
助成金申請で一番重要なことは、まずは契約している社労士に相談することです。
助成金を受給する為には様々な条件をクリアする必要があり、気軽に受給できるわけではありません。
上記の通り、これまで以上に労務管理を徹底する必要があるのです。
金額面だけを目的とせず、労働環境の整備や従業員の長期定着の為に活用していきましょう。
4. まとめ
・助成金を受給するためには労働法令に遵守した労働環境の整備が必要
・受給金額だけを目的とすると中長期的には収支がマイナスになる場合がある
・助成金申請の話があった際は、まずは契約している社労士に相談する